人生は山あり谷あり

先日、スマホ内の写真の整理をしていると懐かしい写真が出てきた。

 

腹立つ程に快晴

何の変哲もないこの美しい景色は、初めて高尾山に登った際に撮影したものなのだが、この登山、普通ではなかった。

 

 

きっかけは、疎遠になっていた友人との再会。

お互いの近況報告をしつつ、仕事が軌道に乗ってようやく落ち着いたので「なにか新しい事、始めたいね~」と会話していた。

 

お互いに思い立ったら即行動に移すタイプで、会話しつつ手軽に始められそうな趣味を検索。すると、「登山」というワードが引っ掛かった。

 

友人は過去に登山経験があり、話を聞くとすこぶる楽しかったらしい。

「いいやん、登山始めよう」と二人して盛り上がり、その場でガイド付きの団体ツアーのようなものに申し込んだ。

 

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当日の集合場所は高尾山の最寄り駅。

到着すると同じツアーに申し込んだであろう人間が30人程いた。

 

(案外多いな…)と思いつつ、受付を済ませ友人と二人で待機していると、突然ガイドの男性が話始めた。

 

「男女ごとに1列に並んでください」

 

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どういうシステム…?と戸惑いながらしぶしぶ縦1列に並ぶ。

 

すると、同じ男性がさらに続ける。

「友人と一緒に参加されている方はいますか?」

 

??????????????

そんな確認必要か…?と思いながら、手を挙げると、

男は「友人と参加されている方は離れて並んでください~」とアナウンス。

 

な…なぜ…と混乱しているうちに友人は前方の列に連れ去られ、私はひとり知らない男の横にぽつんと取り残されてしまった。

 

咄嗟のことで頭が全く回っていなかったのだが、

この状況もしかして…と考えているうちに隣に立っている見知らぬ人間との自己紹介タイムが始まる。

 

いやこれ… もしかして:合コン…

 

完全に私達の確認不足なのだが、どうやらこのツアー、登山を介して交際相手を見つけるいわゆる「山コン」と呼ばれるものだったらしい。

 

 

ここからは悪夢である。

 

「山コン」なだけに一緒に登山できる相手は運営から指定され、列を外れて移動することはもちろん、好きなタイミングで休憩することもできない。

さらに、様々な参加者と交流ができるよう、数分間隔で人間のローテーションが発生する。

 

そもそも、私は初対面の人間とのコミュニケーションが苦手だ。

初対面の人間でもある程度慣れれば問題ないのだが、ローテーションにより数分毎に関係値ゼロの知らん男と会話をしなければならない。

 

お名前は?趣味は?お仕事は?

 

毎度同じような話題を振って、気不味くならないように会話を回していくが、

いやこれ、山どころじゃなくね?

 

コミュ力に加えて体力もない私は、息切れしながら必死に受け答えをしているとようやく頂上に到着。

 

昼の休憩は流石に自由時間だったのだが、友人はコミュニケーション能力が高いため、この空気感にすっかり溶け込んでおり、まさかの「仲良しグループ」ができていた。

 

 

昼食はこのグループにお邪魔することになったのだが、私の方も(ここまできたら楽しむか…)とヌルっと楽しく会話に参加した。

 

楽しそう

 

下山時は数回休憩を挟みながら、登山時と同じくペアをローテーション。

終盤に差し掛かり安心しかけていたところで、最後の最後にクセが強い方に当たってしまった。

 

この男性、私よりも年下らしいのだが、最近彼女と分かれたとのことでこの世の全てに絶望していた。

 

さらに「独身」というものを親の仇かというくらい呪っており、発する言葉の8割が毒。

 

職場は独身女性ばかりでヤバイ(なにがヤバイのかわからないが)とか、結婚してない奴は終わっている…など、認知の歪みが半端ではない。

こういった経緯から自身に交際相手がいないことにかなり焦っていた。

 

この時点で(ヤバイのはお前な…)と思っていたのだが、その後はひたすら自分の欠点はなにか、というカウンセリングタイムに突入。

 

自分でかけた呪いで自分が苦しんどるな~と思いつつ、めんどくさいので適当に相槌を打つ。

(今思えば無視が正解だったのだが)これに気持ち良くなったのか、私に対して突然「おれ、〇〇さん全然いけますよ」などと言う。

 

いや「全然」「いけます」とは……。いけませんが……。

さすがにムカついたので初対面でそういうのやめた方が良いですよ、と指摘するとなにが…?と言わんばかりの表情だった。

 

その後は感情を無にしてのらりくらりと交わし、やっとの思いで平地に到着。

 

到着後は連絡先交換タイムなるものがあったのだが、開始直後にトイレに逃げ込みフェードアウトした。

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団体が解散したのを見計らって友人と合流し、

駅前で売っているお団子を並んで食べる。

 

思いもよらぬ一日に二人でゲラゲラ笑いながら、

次は普通に山登りしような…と硬い契を交わした。